TIP
GitHub: https://github.com/coleam00/Archon · MIT オープンソースライセンス · Bun + Claude Code + Git
入門レベル | 約 20 分 | Archon のコア概念(Worktree 隔離、DAG ノードタイプ、YAML ワークフロー構文)を理解し、セットアップ方法を押さえ、典型的なワークフロー実務を 3 つ体験します。
プロジェクト概要
まず、事実を認めましょう。あなたが AI にバグ修正を頼むと、意図していない別の場所もついでに変えてしまうかもしれません。機能追加を頼むと、今回は通ったのに次に同じことをさせると、また説明しながら別の方向へ逸れていくことがあります。PR を書かせれば、毎回説明文の文体がバラバラです。
これらは AI がわざと邪魔をしているわけではなく、プロセス全体に「構造」がないから起きています。AI に届くのは曖昧な指示 1 文で、出力は当時のモデルの気分や状況(コンテキスト)次第で大きく変わります。
Archon がやることは、AI コーディングに構造を足すことです。YAML で開発プロセスを定義します——計画、検証、コードレビュー、PR 作成。それぞれ何をするのか、何に依存しているのか、いつ完了とみなすのかをすべて明記します。そして AI をその枠組みに「押し込み」、構造の中で自由に動かしつつ、あてもなくあちこち飛び回らせないようにします。
もう一つの重要能力が Git Worktree による隔離です。各ワークフローは独立した git ブランチと作業ディレクトリ上で実行されるため、5 つのタスクを並列に回しても互いに踏みつぶしません。タスクが終われば主ブランチにマージし、ダメなら Worktree をその場で削除——あっさり、きれいに片付きます。
対象読者のイメージ
- Claude Code または Codex を使っている開発者
- AI プログラミングのワークフローを標準化したいチーム
- AI による成果を、再現可能でレビュー可能な形にしたい人
コア依存と環境
- Bun
- Git
- Claude Code(CLI)
- GitHub CLI(完全インストール時に必要)
TIP
Windows ユーザーは PowerShell で依存関係をまとめてインストールするのがおすすめです。Claude Code も 1 行コマンドで完了:irm https://claude.ai/install.ps1 | iex
完全なプロジェクト構造ツリー
.archon/ # プロジェクト単位(setup wizard が生成)
├── commands/ # カスタムコマンド(Markdown ファイル)
├── workflows/ # カスタムワークフロー(YAML)
│ └── defaults/ # 内蔵ワークフローテンプレート
└── config.yaml # プロジェクト設定(assistant モデルなど)
~/.archon/ # ユーザー単位のグローバル設定
├── workspaces/owner/repo/ # GitHub ユーザー/リポジトリ単位で隔離された環境
│ ├── source/ # リポジトリのクローンまたはローカルパス
│ ├── worktrees/ # Git Worktree の隔離ディレクトリ
│ └── artifacts/ # ワークフローの成果物(git に入れない)
└── config.yaml # グローバル設定
手順(ステップごと)
Step 1:Archon をインストール
インストール方法は 2 通り。状況に合わせてどちらかを選んでください。
方法 1:完全インストール(推奨、5 分)
git clone https://github.com/coleam00/Archon
cd Archon
bun install
claude
そして Claude Code にこう伝えます:"Set up Archon"。対話型の導入ガイドが起動し、GitHub 認証情報の設定、プラットフォーム連携の選択、接続テスト、最後に Archon のスキルファイルを目的のプロジェクトへコピーしてくれます。
方法 2:クイックインストール(30 秒、すでに Claude Code がある場合)
# macOS / Linux
curl -fsSL https://archon.diy/install | bash
# Windows(PowerShell)
irm https://archon.diy/install.ps1 | iex
# または Homebrew
brew install coleam00/archon/archon
クイックインストールは CLI だけを入れます。認証情報の自動設定や、プロジェクトへのワークフロー登録は行われないため、初期化を手動で行う必要があります。
WARNING
Archon は 目的のプロジェクトディレクトリ で実行する必要があります。Archon のリポジトリ内で実行しないでください。setup wizard がこのプロジェクトを登録し、以降ワークフローが使えるようになります。
Step 2:Setup Wizard を実行(完全インストールユーザー)
完全インストールを使った場合、setup wizard が以下の手順をガイドします:
- CLI インストール —
archonバイナリを PATH に配置 - GitHub 認証 —
gh auth loginにより、Archon がリポジトリを操作できる権限を持つようにする - プラットフォーム選択 — Telegram / Slack / Discord への連携をするかどうか(任意)
- 対象プロジェクト — 登録するプロジェクトディレクトリを選択。wizard が
.archon/のスキルファイルをコピー
完了すると、目的のプロジェクト内に次のものが追加されます:
.archon/
├── commands/ # AI が呼び出せるコマンドファイル
└── workflows/ # ワークフロー定義
Step 3:目的のプロジェクトを初期化
クイックインストールの場合は手動で初期化します:
cd your-project
archon init
# または Claude Code で: "Use archon to set up" と言う
初期化後に確認:
archon workflow list
# 17 個の内蔵ワークフローが表示されるはずです
Step 4:YAML ワークフロー構造を理解する
Archon のワークフローは DAG(有向非巡回グラフ)です。各ノードは実行ステップを表します。ノード間の依存関係は depends_on で宣言し、Archon はトポロジカル順(位相順)に実行します。依存がないノードは並列に実行できます。
完全なワークフローはこうなります:
# .archon/workflows/my-feature.yaml
nodes:
# ノード 1:計画(依存なし。直接実行)
- id: plan
prompt: "コードベースを探索し、実装計画を立てる"
# ノード 2:実装(plan に依存)
- id: implement
depends_on: [plan]
loop: # AI ループノード
prompt: "計画を読み取り、次のタスクを実装して検証を実行"
until: ALL_TASKS_COMPLETE
fresh_context: true # ループのたびに新しい AI セッションを使う
# ノード 3:テストの実行(implement に依存。bash ノードで純粋な決定論的実行)
- id: run-tests
depends_on: [implement]
bash: "bun run validate"
# ノード 4:コードレビュー(テストが通ったら実行)
- id: review
depends_on: [run-tests]
prompt: "すべての変更をレビューし、計画に照らして問題を修正"
# ノード 5:人手による承認(インタラクティブな gate)
- id: approve
depends_on: [review]
loop:
prompt: "変更内容を提示し、あらゆるフィードバックに対応"
until: APPROVED
interactive: true # 人の入力を待つために停止
# ノード 6:PR 作成
- id: create-pr
depends_on: [approve]
prompt: "コードをプッシュし、Pull Request を作成"
ノードタイプ一覧:
| ノードタイプ | キーワード | 用途 |
|---|---|---|
| AI 対話 | prompt: | AI が特定のタスクを実行する |
| 決定論的スクリプト | bash: | シェルコマンドを実行(stdout を $nodeId.output として出力) |
| スクリプト | script: | TypeScript/Python のスクリプトを実行(依存のインストールやタイムアウト制御に対応) |
| AI ループ | loop: + until: | 条件を満たすまで AI が繰り返し実行(ALL_TASKS_COMPLETE / APPROVED など) |
| 人手による承認 | interactive: true | ワークフローを停止し、人の承認/却下を待つ |
| コマンド呼び出し | command: | .archon/commands/ 配下のコマンドファイルを呼び出す |
| 条件分岐 | when: | 条件に応じてノードを実行するか決める |
Step 5:実務——GitHub Issue から PR へ
これは最もよく使われるワークフローの一つです。GitHub Issue を入力して、PR を出力します。
Claude Code でそのまま言います:
Use archon to fix issue #42
Archon は自動で:
- 隔離された Worktree ブランチ(
archon/fix-42-xxx)を作成 archon-fix-github-issueワークフローを実行:問題の分類 → 調査 → 計画 → 実装 → 検証 → PR 作成- テストが失敗したら自動的に self-fix ループへ
- 完了後は Worktree 内で操作し、ローカルの主ブランチには影響しない
あなたが目にするだいたいの流れ:
→ Creating isolated worktree on branch archon/fix-42-abc...
→ Planning...
→ Investigating issue #42...
→ Implementing (task 1/3)...
→ Implementing (task 2/3)...
→ Tests failing - iterating...
→ Tests passing after 2 iterations
→ Code review complete - 0 issues
→ PR ready: https://github.com/you/project/pull/47
Step 6:実務——アイデアから PR へ
手元に既存の Issue がない場合でも、アイデアが 1 つあれば十分です:
Use archon to add dark mode to the settings page
Archon は archon-idea-to-pr ワークフローで進めます:
→ Feature idea → plan → implement → validate → PR → 5 parallel reviews → self-fix
この過程で AI は:
- まずコードベースを探索し、現在のアーキテクチャを理解する
- 実装計画を立てる(途中であなたが介入して修正できます)
- loop ノードで、すべてのタスクが完了するまで繰り返し実装する
- 検証を実行(
bun run validate) - 並列で 5 つのコードレビュー Agent(スタイル、安全性、パフォーマンス、保守性、ドキュメント)を動かす
- レビュー結果に基づいて self-fix
- PR を作成し、完全なレビュー要約を添える
Step 7:カスタムワークフローの作成
内蔵ワークフローは良い出発点です。まず一つコピーして直せばOKです:
cp .archon/workflows/defaults/archon-feature-development.yaml \
.archon/workflows/my-feature.yaml
あとは YAML ファイルを編集します。たとえば人手による承認ステップを外して、直接マージしたいならこうします:
# .archon/workflows/my-feature.yaml
nodes:
- id: plan
prompt: "要件を分析し、実装計画を立てる"
- id: implement
depends_on: [plan]
loop:
prompt: "計画を読み取り、次のタスクを実装して完了としてマーク"
until: ALL_TASKS_COMPLETE
fresh_context: true
- id: run-tests
depends_on: [implement]
bash: "bun test"
- id: create-pr
depends_on: [run-tests]
prompt: "コードをプッシュし、Pull Request を作成。次のテンプレートを使用:..."
TIP
プロジェクト単位の .archon/workflows/ は、同名の内蔵ワークフローを上書きします。カスタムワークフローを Git にコミットすれば、チームメンバーも同じ一連の流れを使えます。
変数の置換:ワークフロー内では、次の内蔵変数を使えます:
- id: log-context
bash: "echo $WORKFLOW_ID $ARTIFACTS_DIR $BASE_BRANCH"
$1,$2,$3— ポジショナル引数$ARGUMENTS— すべての引数$ARTIFACTS_DIR— 現在のワークフロー実行(run)が生成した成果物ディレクトリ$WORKFLOW_ID— ワークフロー実行 ID$BASE_BRANCH— メインブランチ名$LOOP_USER_INPUT— approval gate で人が入力したフィードバック
Step 8:Web UI+複数プラットフォーム連携
Archon は CLI だけではありません。Web Dashboard も用意されています。素早く起動:
archon serve
#(初回は)Web UI をダウンロードし、http://localhost:4000 で起動
Web UI でできること:
- チャットページ — AI とリアルタイムに対話。ストリーミング出力やツール呼び出しを確認
- ダッシュボード — すべてのワークフローの実行状態を監視(すべてのプラットフォーム:CLI、Slack、Telegram など)
- Workflow Builder — 視覚的な DAG エディタ(ドラッグ&ドロップでワークフローを作成)
- Workflow Execution — 任意のワークフローの実行過程をステップごとに確認
チャットプラットフォーム連携(任意):
| プラットフォーム | 連携にかかる時間 | 設定方法 |
|---|---|---|
| Telegram | 5 分 | archon.diy/adapters/telegram |
| Slack | 15 分 | archon.diy/adapters/slack |
| Discord | 5 分 | archon.diy/adapters/community/discord |
| GitHub Webhooks | 15 分 | archon.diy/adapters/github |
連携後は、Slack や Telegram から直接ワークフローを起動でき、結果が同じ会話にリアルタイムで送られます。
よくある問題のトラブルシューティング
1. Claude Code で Archon コマンドが見つからない
これは通常、クイックインストール後に setup wizard を実行していないときに起きます:
# setup をもう一度実行
cd your-project
claude
# 「Set up Archon」または「Use archon to set up」と言う
# またはスキルファイルを手動で更新
archon update
2. Worktree 作成に失敗する
最も多い原因は、ディスク容量不足か権限の問題です:
# ディスク容量を確認
df -h
# git バージョンを確認(Worktree を使うには 2.23+ が必要)
git --version
# 古い Worktree を手動で整理
archon isolation cleanup
WARNING
git clean -fd を手動で実行するのは絶対にやめてください。未追跡ファイルが恒久的に削除されます。安全に片付けるには archon isolation cleanup か archon complete <branch> を使ってください。
3. ワークフロー一覧が空
# .archon/workflows/ ディレクトリがあるか確認
ls .archon/workflows/
# 手動でワークフローを検出して実行
archon workflow list --verbose
内蔵ワークフローも見つからない場合は、Archon のバージョンを確認:
archon --version
4. YAML ノードの依存関係ループ
depends_on が環(サイクル)を作っていると、Archon はエラーを出します:
Error: Circular dependency detected in workflow
解決方法:YAML ファイルを確認し、ノード同士が互いに依存し合っていないこと(あるノードの depends_on が自分自身または下流ノードを指していないこと)を確かめてください。
5. インタラクティブな Approval Gate が CLI で反応しない
Approval Gate は人手の介入が必要です。CLI では、ワークフローが入力待ちで停止します:
Workflow paused: awaiting approval
Type /workflow approve <run-id> [comment] to approve
Type /workflow reject <run-id> <reason> to reject
Web UI で実行している場合は、interactive: true のノードが承認ボタンを自動表示します。
6. PostgreSQL と SQLite の切り替え
Archon はデフォルトで SQLite(ゼロ設定)を使い、データは ~/.archon/archon.db に保存されます。PostgreSQL に切り替えたい場合:
# PostgreSQL を起動(Docker)
docker-compose --profile with-db up -d postgres
# .env で接続文字列を設定
DATABASE_URL=postgresql://postgres:postgres@localhost:5432/archon
# Archon を再起動
archon serve
WARNING
データベースの切り替えは、自動でデータ移行を行いません。重要な履歴がある場合は、先にエクスポートしてから切り替えてください。
追加の読み物/発展方向
内蔵 17 ワークフローの詳細:Archon は、日常の補助(archon-assist)から複雑なレビュー(archon-comprehensive-pr-review)までをカバーする完全なツールチェーンを提供します。その中でも archon-refactor-safely には type-check hook があり、archon-architect はアーキテクチャの健全性スキャンを行い、archon-ralph-dag は PRD の反復実装をサポートします。
カスタム Node タイプ:内蔵ノードに加えて、command: でカスタムコマンドファイル(Markdown)を呼び出したり、script: で TypeScript/Python スクリプトを実行したりできます(deps: による依存インストールと、timeout: によるタイムアウト制御に対応)。さらに approval: で人手による承認フローをカスタムできます。
プラットフォームアダプタ開発:Archon のアダプタ層(IPlatformAdapter)は、どんなチャットプラットフォームにも連携できるよう設計されています。packages/adapters/src/ の下にある Slack、Telegram、Discord の実装を参考にすれば、企業向けの WeChat や Fēishu(飛書)など国内サービスの連携も可能です。
Archon アーキテクチャの深掘り解析:中心は @archon/workflows パッケージ内の DAG 実行エンジン(dag-executor.ts)+ @archon/core の Orchestrator(メッセージルーティングとセッション管理)です。ワークフロー YAML は loader.ts で解析・検証され、ノードは depends_on でトポロジカルグラフを構築し、その後トポロジカル順に実行されます。
チーム向けワークフローの標準化:.archon/workflows/ を Git にコミットしておけば、チームメンバーは毎回 clone 後に同じワークフロー定義を自動で取得できます。さらに .archon/config.yaml を使ってチームのコーディング規約を注入すれば、AI が生成するすべての内容がチームの取り決めに従います。