Agency Agents 入門ガイド:100人以上のAI専門家ロールでClaude Codeを“夢のチーム”にする

June 13, 2026

私たちがみんな知っている通り、プロンプトを書くのは一種の職人芸です。同じClaudeモデルでも、「Reactコンポーネントを書いて」と頼むのと、「シニアなフロントエンドエンジニアの視点で、WCAG 2.1 AAの仕様に従い、TypeScript + React 18でアクセシブルな仮想スクロール表を作って」のように条件を明確にした場合では、出力の品質が天と地ほど変わってきます。

Agency Agents は、この課題を解決するために作られています。16の部門、100+のAI専門家ロール(Frontend Developer、Backend Architect、Security Auditor、Reddit Community Ninja……)の人物設定、プロセス、成果物、評価指標までをすべて編成済みなので、対応するロールを有効化するだけで、AIが自動的に「プロフェッショナルモード」に入ります。

さらに便利なのは、リポジトリに convert.sh と install.sh が同梱されていることです。同じロール定義を、Claude Code、OpenClaw、Cursor、OpenCode、Codex、Gemini CLI など10種類以上のツールへワンストップで同期でき、設定ファイルを複数管理する必要がありません。

この記事では、ゼロから実際に動かすところまで一緒に進め、OpenClawでロールを有効化して実際の要望をこなすデモを行います。

プロジェクト概要

msitarzewski/agency-agents は、Redditの投稿にあった「もしAIの従業員チームを雇えるなら、どんな職種が欲しい?」という議論が起点です。数か月にわたる反復を経て、かなり完成度の高いAIエージェントのロールライブラリへと進化しました:

  • 16の部門:engineering、design、marketing、finance、security、sales、testing……など、ソフトウェア企業が必要とするほぼすべての職種をカバー
  • 100+のロール:Frontend Developer、Backend Architect から、Whimsy Injector、Reality Checker のように「キャラクター設定の温度感」を持ったロールまで
  • 測定可能な成果物:各ロールには success metrics、deliverables、critical rules が明記されており、ただの空虚なプロンプトではありません
  • 多ツール対応:同じMarkdownの元ファイルを、Claude Codeのsubagent、OpenClaw workspace、Cursorのrule、OpenCodeのagent、CodexのTOML などの形式に変換可能

通常のプロンプトテンプレートとの最大の違いは、ここでは各ロールに「人格化された設定(口調・スタイル・記憶メカニズム)」+「ビジネスプロセス(mission / workflow / deliverables)」がセットで入っており、「一通の求人票(職務内容書)」にかなり近い点です。

難易度 / 所要時間 / 得られるもの

  • 難易度:⭐⭐(コマンドラインを使うだけで、コード不要の入口がないわけではありません)
  • 所要時間:15〜30分(初回インストール + ロールを1つ有効化 + 実際の要望を通すまで)
  • 得られるもの:Claude Code / OpenClaw を「必要に応じて調達(オンデマンドにスケジューリング)」できる多ロールAIチームにして、長期的にプロ人設(プロフェッショナルな人格設定)を安定させられる

対象読者イメージ

  • AIで効率化したいが、プロンプトを書くのが面倒だと感じている開発者
  • 経験1〜5年のフロントエンド / バックエンド / フルスタック / セキュリティ / テストエンジニア
  • Claude Code、Cursor、OpenClaw、Codex などのAIプログラミングツールをすでに実務で使っている人
  • チーム内に「AI協業のルール」を導入したいテックリード

コア依存関係と環境

ツール最低バージョン説明
Git2.30+リポジトリをクローン
Bash4.0+convert.sh / install.sh を実行(WindowsはGit BashまたはWSLが必要)
Node.js18+一部の対象ツール(OpenClaw、Codex)で必要
対象IDE / CLI最新版Claude Code、OpenClaw、Cursor、OpenCode のいずれか1つでOK

TIP

もしあなたがすでに OpenClaw(複数の大規模モデルを統一的にスケジューリングするCLIゲートウェイ)を使っているなら、この記事は「コストゼロ」で最後まで通せます。

TIP

呼び出しコストについて:Agency Agents の各専門家ロールの裏で動いているのはトップクラスのモデル(Claude Opus 4.8、GPT-5.4、Gemini 2.5 Pro)です。ロールを1つ有効化してReactコンポーネントの反復を20ラウンド回すと、公式の安価なプランでも十数ドルは必要になります。もし 公式の半額 で同じモデルを使いたいなら Defapi を試してみてください。これはLLM APIの中継プラットフォームです。強みは、ほぼすべてのモデルが v1/chat/completions、v1/messages、v1beta/models/ の3種類のプロトコルに互換であること。つまり、業務コードを変えずに済みます。OpenClawの設定で base_url をDefapi側のエンドポイントに向けるだけで、すぐに節約でき、個人開発者や小規模チームにとって非常に使いやすいです。公式サイトの入口:defapi.org。

完全なプロジェクト構造ツリー

agency-agents/
├── academic/                       # 学術研究の方向性
├── design/                         # UI/UXデザイン
├── engineering/                    # 開発(最大の部門、30+ロール)
├── finance/                        # 財務
├── game-development/               # ゲーム開発
├── gis/                            # 地理情報
├── marketing/                      # マーケティング
├── paid-media/                     # 有料広告
├── product/                        # プロダクト
├── project-management/           # プロジェクト管理
├── sales/                          # 営業
├── security/                       # セキュリティ
├── spatial-computing/            # 空間コンピューティング
├── specialized/                    # 専門家
├── strategy/                       # 戦略
├── support/                        # カスタマーサポート
├── testing/                        # テスト
├── integrations/                   # 多ツール統合の成果物
│   ├── openclaw/                   # OpenClaw ワークスペース(SOUL.md + AGENTS.md + IDENTITY.md)
│   ├── opencode/                   # OpenCode agent(.md + YAML frontmatter)
│   ├── claude-code/                # Claude Code subagent
│   ├── cursor/                     # Cursor rule(.mdc)
│   ├── codex/                      # Codex custom agent(TOML)
│   ├── gemini-cli/                 # Gemini CLI subagent
│   ├── github-copilot/             # GitHub Copilot
│   ├── aider/                      # Aider CONVENTIONS.md
│   ├── windsurf/                   # Windsurf .windsurfrules
│   ├── kimi/                       # Kimi Code CLI
│   ├── qwen/                       # Qwen Code SubAgent
│   └── mcp-memory/               # MCP 長期記憶
├── scripts/
│   ├── convert.sh                  # ロール定義 → ツール形式変換器
│   ├── install.sh                  # ワンストップでローカルへインストール
│   ├── lib.sh                      # 共通関数
│   └── lint-agents.sh              # ロール定義のlint
├── README.md
└── CONTRIBUTING.md

手順を一つずつ

ここでは OpenClaw を例に、全体の流れをデモします。他のツールは --tool を対応する名前に置き換えるだけで大丈夫です。

手順1:リポジトリをクローン

git clone https://github.com/msitarzewski/agency-agents.git
cd agency-agents

ネットワークが制限されている場合は、先にGiteeにforkするか、自分のGitHubにforkしてからクローンします:

git clone https://github.com/<your-fork>/agency-agents.git
cd agency-agents

手順2:インストール可能な部門とロールを確認

install.sh はとても便利な「一覧表示(list)」モードを提供しています:

./scripts/install.sh --list teams

このような出力が表示されます:

engineering          33 agents
design               12 agents
marketing            18 agents
security              9 agents
testing              11 agents
...

特定の部門だけを入れたい場合(例:engineering + security)は、以降の --division でフィルタできます。

手順3:OpenClaw形式の統合ファイルを生成

convert.sh は元のMarkdownを、OpenClawが期待する SOUL.md(人格)+ AGENTS.md(プロセス)+ IDENTITY.md(アイデンティティ)の3点セットに分割します:

./scripts/convert.sh --tool openclaw

成功すると、integrations/openclaw/ ディレクトリに100+個のサブディレクトリが増えます:

ls integrations/openclaw/ | head -20
# agency-frontend-developer
# agency-backend-architect
# agency-security-auditor
# agency-reddit-community-ninja
# agency-whimsy-injector
# ...

各サブディレクトリはこんな構成になっています:

agency-frontend-developer/
├── SOUL.md        # ロールの人格:アイデンティティ、記憶、口調、スタイル
├── AGENTS.md      # 業務プロセス:mission、deliverables、workflow
└── IDENTITY.md    # アイデンティティカード:絵文字 + 名前 + vibe

手順4:OpenClawへワンストップでインストール

# 全ロールを一括インストール(約100+ロール)
./scripts/install.sh --tool openclaw

# 推奨:部門ごとに選んでインストール(まとめて詰め込みすぎない)
./scripts/install.sh --tool openclaw --division engineering,security

スクリプトは自動的にワークスペースを ~/.openclaw/agency-agents/ にコピーし、OpenClawゲートウェイへ登録します。

手順5:OpenClawゲートウェイを再起動して新ロールを有効化

WARNING

OpenClaw gateway が常駐で動いている場合、必ず再起動して新しく登録されたロールを読み込ませてください。そうしないと「agent not found」になります。

openclaw gateway restart

手順6:OpenClawでFrontend Developerを有効化

openclaw chat --agent agency-frontend-developer

あるいは、設定ファイルでデフォルトのagentを agency-frontend-developer に変更すれば、OpenClaw起動のたびにそのロールに自動的に入ります。

手順7:実際の要望を実行

有効化したばかりのFrontend Developerに、アクセシブルな仮想スクロール表のコンポーネントを書かせてみましょう:

openclaw chat --agent agency-frontend-developer <<'EOF'
React 18 + TypeScript で DataTable コンポーネントを書いてください。要件:
1. @tanstack/react-virtual を使って仮想スクロールする
2. WCAG 2.1 AA のアクセシビリティ仕様を満たす
3. セルはカスタムレンダリングをサポートする
4. 行クリックのイベントは設定可能にする
5. そのまま実行できる完全なコードを提示する
EOF

生成されるコードは非常に一貫していることに気づくはずです。これは、ロール定義にすでに「WCAG 2.1 AA」「memoで包む」「Core Web Vitals最適化」といった制約が固められているからです。毎回プロンプトにこれらの要件を繰り返し書く必要はありません。

手順8:ツール間デモ(任意)

同じロール定義をCursorへ変換するのも1行で済みます:

./scripts/convert.sh --tool cursor
./scripts/install.sh --tool cursor --agent frontend-developer,backend-architect

TIP

Cursorモードではロールは .cursor/rules/<slug>.mdc の形式で存在します。Cursorはファイルのglobsに基づいて必要に応じて自動ロードするため、globs: "**/*.tsx" のように書けば、フロントエンドロールだけがTSXファイルに適用され、バックエンド側のファイルを汚さずに済みます。

よくある問題の切り分け

Q1:install.sh が permission denied を返す

通常は install.sh に実行権限が付いていないだけです。macOS / Linuxユーザー:

chmod +x scripts/install.sh scripts/convert.sh scripts/lib.sh
./scripts/install.sh --tool openclaw

WindowsユーザーでGit Bashを使っていて同じエラーが出る場合は、まずリポジトリがzipの解凍ではなく git clone でダウンロードされていることを確認し、Git Bashでスクリプトを実行してください。

Q2:OpenClaw が「agent not found」または「未登録」と表示する

99%のケースでは、ロールを入れた後に gatewayを再起動していない ことが原因です:

openclaw gateway restart
openclaw agent list | grep frontend-developer
# 出力があるなら登録成功のサインです

それでもダメなら、~/.openclaw/agency-agents/ ディレクトリに本当に agency-frontend-developer/SOUL.md があるか確認してください:

ls ~/.openclaw/agency-agents/agency-frontend-developer/
# SOUL.md  AGENTS.md  IDENTITY.md が見えるはずです

Q3:OpenCodeでロールを一度にたくさん入れると先頭119個しか表示されない

これはOpenCodeの上流にある既知のバグ(issue #27988)で、実行時には約119個までしかsubagentを登録せず、残りは黙って破棄されます。

解決策:--division でインストールを分割し、総ロール数を119以内に収めます:

./scripts/install.sh --tool opencode --division engineering
./scripts/install.sh --tool opencode --division marketing --out ~/.opencode-extra/

スクリプトは閾値を超えた場合に自発的に warning を出します。まずはdry-runで確認してもOKです:

./scripts/install.sh --tool opencode --division engineering --dry-run

Q4:ロールのfrontmatterに不足フィールドがありconvertがスキップする

convert.sh は name フィールドがないソースファイルをスキップします。自分でロールをforkしたのに integrations/openclaw/ に出てこない場合は:

# 1. ソースファイルのfrontmatterを確認
head -10 engineering/your-custom-agent.md

# 2. 少なくとも含めるべきもの:
#    ---
#    name: Your Agent Name
#    description: One-line description
#    ---

# 3. 再変換
./scripts/convert.sh --tool openclaw

Q5:Windowsでbashスクリプトの改行コードが原因でエラーになる

Windows上でzipを解凍してきたスクリプトを実行すると、CRLF改行コードになっていてbash実行時に \r: command not found と出ることがあります:

# 方法A:zipをダウンロードするのではなくgit cloneする
git clone https://github.com/msitarzewski/agency-agents.git

# 方法B:改行コードを手動変換(Git Bash)
dos2unix scripts/*.sh

Q6:ロール間の人格の衝突 / 文脈の混線

1つのセッション内で、まずFrontend Developerを有効化してからSecurity Auditorに切り替えると、前のロールの口調が文脈に残ってしまうことがあります。これは、多くのCLIツールのagentが「system promptレベル」で注入されており、agent切り替えだけでは会話履歴が自動でクリアされないためです。

解決策:

# 切り替え前に新しいセッションを開始
openclaw chat --new-session --agent agency-security-auditor

または、OpenClawの設定で「agent切り替え時に旧セッションを自動でアーカイブする」を有効化します。

追加の読み物 / 進化の方向性

1. カスタムロールテンプレート

engineering/engineering-frontend-developer.md は非常に良い雛形です。forkして engineering-frontend-developer-chinese.md のように改変してみてください:

---
name: 前端エンジニア(中文版)
description: React/Vue、UI実装、パフォーマンス最適化が得意なフロントエンドエンジニア。中国語コメントを出力
color: cyan
emoji: 🖥️
vibe: 中国語で出力し、ByteDanceのフロントエンド規約に従う
---

# 前端エンジニア(中文版)

あなたは**フロントエンドエンジニア**であり、モダンWeb技術……に集中しています。

## 🧠 あなたのアイデンティティと記憶
- ロール:モダンWebアプリとUI実装の専門家
- 性格:細部へのこだわり、パフォーマンスに敏感、ユーザー重視
- 記憶:よくあるUIパターンとアクセシビリティのベストプラクティスを覚える

その後 ./scripts/convert.sh --tool openclaw を実行すれば、新しいロールが integrations/openclaw/ に出てきます。

2. MCP-Memoryでロールに長期記憶を追加

integrations/mcp-memory/ ディレクトリには、MCP memory server の設定一式が用意されています。有効化すると、ロールはセッションをまたいで好み(例:「このチームはnpmではなくpnpmを使う」)を保持できます。設定方法はリポジトリ内の mcp-memory/README.md を参照してください。

3. マルチエージェント協業ワークフロー

単体ロールでも十分強力ですが、さらに面白いのはそれらを協業チェーンに編成することです。たとえば:

要望 → [プロダクトマネージャー] がタスクを分解
     → [フロントエンド開発者] + [バックエンドアーキテクト] が並行実装
     → [コードレビュー担当] が自動監査
     → [QAテストエンジニア] がテストを実行
     → [テクニカルライター] がPRの説明文を生成

OpenClawにはこれらのロールをつなぐ「workflow」機能が内蔵されています。詳細は OpenClaw公式ドキュメント を参照してください。

4. 呼び出しコストを下げる

前述の通り、Agency Agents の専門家ロールの裏ではトップレベルのモデルが動いているため、長期運用ではコストが高くなりがちです。同じモデルを公式の半額で使いたいなら、コード変更なしで Defapi にそのまま接続できます(前の「コア依存関係」セクションに詳細あり)。


本記事は msitarzewski/agency-agents の現行mainブランチに基づいて執筆しています(commit:2026-06-13時点)。今後のリポジトリで部門の追加やスクリプトのインターフェース変更が入る可能性があります。作業の前に、まず git pull で最新バージョンへ同期することをおすすめします。

Updated June 13, 2026